ご近所のぜいたく空間”銭湯”「歌舞伎湯」
春日から富坂を登り、伝通院の裏手にある一見ごく普通のマンション。その地下に歌舞伎湯はあります。マンション型で、全体的に洋風で優雅さが漂う銭湯です。
1階の下足場で靴を脱ぎ、階段を少し降りると現代風のフロントと待合スペースがあり、さらにちょっと下りると脱衣室が。少しずつ潜って行くような感覚は何だか不思議なものですが、驚くのはその先に、扉が開くと建物外観からは想像も付かない、まさに銭湯という大空間が広がっているところです。
洗い場に入ると正面には、美しいモザイクタイルが一面に。やや秋づいた山河が描かれ、女湯にはお城(モデルはドイツのノイシュヴァンシュタイン城だそう)もそびえ立ち、ヨーロピアンな雰囲気を醸しだしています。洋風銭湯には、タイル絵がよく似合いますね。
実は、先代の奥様は銀座生まれの銀座育ち。シャンデリアや銅に刻まれた少女のレリーフなど、モダンな設えにも納得です。
ダブルアーチ型の天井も美しく、薬湯やバブル湯、電気風呂など、浴槽の種類が多いのも現代型の銭湯ならではですが、昔ながらの銭湯のモチーフも多く発見できます。
寺町のためか、今も昔もお客さんの顔ぶれがほとんど変わらないそう。古くからご近所に愛される銭湯です。街歩きの寄り道に、都会の癒やしスポットを、ぜひ味わってみて下さい。
文京建築会ユース
文/谷村嘉彦
写真/栗生はるか
取材/三浦幸子
編集/織田ゆりか
※ この記事はタウン誌「空マガジン」第56号(2015年5月1日発行)に掲載されたものです。